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野川のアオサギ様


1999/2/中旬


野川には、年中、コサギとダイサギ、そしてゴイサギがいます。毎日お魚を捕ってくらしています。
冬になり、部屋の窓外を見ると、真っ白なコサギやダイサギが、カモメと一緒に飛んでいきます。 海からやってくるカモメ達が白いからでしょうか?
そして、橋の下あたりで集会を開いています。うちでは、「白い鳥の会」と呼んでいます。 白い鳥の会はにぎやかです。あの性格の悪いカモメたちだけでもうるさいのに、普段は静かな サギ達までもが大騒ぎです。
中でも体の大きなダイサギは、ここぞとばかりにリーダーシップを発揮しようとしているかのように、 バタバタと羽ばたき、「グワアー」と鳴きます。
そんなにぎやかな白い鳥の会を微笑みながら見るのは、不思議と飽きないものです。

そんなとき、ふと成城の崖の上の林を見ると、大きな鳥がいます。アオサギです。
アオサギは、鷺の中でももっとも大型の鳥です。全長は93cm、羽根を広げると150cm以上もあるそうです。
日本では留鳥ですが、世田谷の野川周辺には、冬になると現れます。 きっと、もうちょっと北からやってくるのでしょう。
サギ類は、孤高で美しい鳥です。人間には決して慣れようとはしません。中でもアオサギはとても注意深く、 ちょっとでも物音がすると飛んでいってしまいます。
何年か前、野川に舞い降りたアオサギを発見し、急いで三脚とカメラとレンズをセットして、そっと近寄りました。 しかし、私をあざ笑うかのように、三脚を置いた瞬間に、アオサギは移動してしまいます。
数十分、アオサギは私と鬼ごっこをしてくれました。私はかくれんぼをしていたつもりだったのですが...。
そして、最後にアオサギは私の真上を飛んでいきました。その大きな音と影だけしか私には分かりませんでした。 側にいた人は、アオサギの毛並みまで見えたと言い、私を悔しがらせました。
誇り高い鷺類の中でも、もっとも大きく、もっとも注意深いアオサギ。私はそれ以来、アオサギ様と呼ぶことにしました。

この冬は、成城の崖の上にある松の木に、毎朝アオサギがきてとまっていました。 そして、夕方の4時過ぎまで、ぼーっと日なたぼっこをしながら昼寝を楽しんでいるのです。
ひがな一日、ぼーっとしているのです。寒い日や風の強い日は、いないこともあります。
そう、チャンスです。今度こそ撮ってやろう。そう思いました。しかし、毎日ぼーっとしている アオサギを見ては、「まあ、あしたでもいいか」と私も思ってしまうのでした。
そうこうしているうちに、ちょっと温かくなってきました。また、アオサギは北に帰るかもしれません。 意を決して、2月のある日の夕方、4時ちょっと前なのを確認した私は、カメラと三脚を持って 松の木の方に歩いていきました。


撮影データ: Nikon F4 + Tokinar 500mm F5.6 + 2x TeleConverter, FUJI SuperG Ace ISO800


アオサギは二羽いました。これは上の方にいたアオサギです。一緒の枝にとまったりしませんし、 一緒に飛び立ったりもしません。アオサギも孤高の鳥なのです。
しかし、木の上では、ぼーっとしているだけなのでした。
鷺類特有の冠羽が風にたなびきます。ちょっと毛繕いをはじめたようです。
突然、上を向きました。孤高の鳥は、空をみて何を思うのでしょうか。
ちなみに、ヨシなどがある湿地に住むヨシゴイは、こういう格好をして、ヨシのフリをします。
でもね、アオサギ様、そうやったからって松の枝には見えないよ。
鋭い目付きで富士山の方を見ます。いや、別に富士山を見ていたわけではないでしょうけれど。
と思ったら、意を決したように、上の枝にいたアオサギは、羽根を広げました。
大きな羽根音とともに、「ゴワアー」と一声鳴き、アオサギは飛び立ちました。
しばらくして、下にいたもう一羽も、一声鳴いて夕日に向かって飛び出しました。
ご覧のように、長い首は折り畳んで飛びます。
「ここまでかあ...」そう思って川の方へ歩いていくと、なんと橋の下にさっきのアオサギが...
両側が護岸工事された川は一段低く、すでに闇に包まれています。
野川の鳥を撮るには、もう厳しい時間帯です。 何枚か撮ったら、偶然に動いてないタイミングで撮れました。
川に降りると、意外にこの鳥は落ち着きがなかったりします。

だからと言って、魚を捕まえたのを見たことがありません。きっと夜に捕るのでしょうね。
再び、しばらくじっとたたずんでいましたが、次の瞬間には飛び立ってしまいました。
飛び立つ瞬間を撮ったのですが、どうにも心霊写真みたいなものになってしまいましたので、 ヒミツにすることにしました。
たくさん、お魚を食べて、明日も窓から見える松の上においでよ。

それからまもなく、アオサギは松の木に来なくなってしまいました。
きっと、北に帰ったのでしょう。
そして、カモ達も北へ帰っていきます。
野川が一番にぎやかな冬も、もう終わりです。鳥達がいなくなって、春はちょっとさびしい季節です。

でも、もうすぐ渡りのシギやチドリがきます。カルガモもたくさんの子どもを連れて、行列をするはずです。
野川は世田谷にありながら、水鳥達のちょっとした楽園なのです。



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